RPAの導入で勤務時間は短縮できるのか?

 2019.05.31  ビジネスプロセス改革推進室

多くの企業が「生産性の向上」や「従業員の満足度向上」を目指して、様々な取り組みを進めている中、残業時間の上限規制を含む「働き方改革」法案が可決され、2019年4月からの施行も開始しました。

働き方改革関連法案の1つである「改正労働基準法」の施行にともない、企業や組織はこれまで以上に労働時間の把握と削減が求められることになります。

そこで今回は、労働時間削減に向けて、RPAなどIT活用がどう貢献できるのか、考えてみたいと思います。

労働時間削減で従業員は幸せになる?

労働時間を削減すれば従業員はプライベートを充実させ、心身ともに健康を保ち、結果として生産性が向上して企業の業績に還元される。働き方改革への取り組みに際しこうした期待を持つ経営者もいるかもしれません。しかし、労働時間を削減することで従業員は本当に幸せになり、それが企業にプラス影響として還ってくることはあるのでしょうか?

この疑問に対してリクルートワークス研究所は労働時間の変化に応じた仕事と生活の満足度調査を過去に実施しています。この調査によれば労働時間が1割以上削減された中で満足度が向上したという人は25.4%に留まっています。さらに労働時間がほとんど変化していない人や1割以上増加したという人についても、2割強は満足度が向上しているという結果です。
引用:リクルートワークス社「働き方が仕事満足度・生活満足度に与える影響

調査結果から労働時間削減は仕事や生活への満足度向上にほとんど影響しない、と言ってよいでしょう。考えられる理由は、無理な労働時間削減によって結果的に労働者の負担が増加しているということです。

たとえば労働時間削減のために「ノー残業デー」などの施策を行ったとして、無理やり長時間労働を是正しても、その間の仕事がなくなるわけではありません。「毎週金曜日の残業は無くなった。でも、休日労働や他の日の残業時間が増えた」では、本質的な問題解決にはなっていません。むしろこうした無理矢理な施策は従業員にストレスを与えるだけです。

もう一つ考えられる理由としては、部門ごとに労働時間削減の恩恵を受けているところとそうでないところがハッキリと分かれることでしょう。たとえば顧客とのコミュニケーションが仕事の営業部門では、ノー残業デーでもやむを得ず残業するといったケースもあるでしょう。残業時間が少なくなった分、上司との付き合いが増えて休まっている気がしないという人もいるかもしれません。

これらの理由から労働時間削減は必ずしも従業員の幸せにはつながらないということです。

労働時間を抜本的に削減するRPAとは

従業員の生活の充実によるエンゲージメントの向上と、結果としての業績への貢献という連鎖がすぐに期待できないかもしれません。しかし、一方で法的な規制が間もなく強化されます。すでに規制上限を超えていないという企業においても、社会的な圧力として労働時間の削減は避けて通れないでしょう。

こうした背景の中で、どの組織においても「抜本的な労働時間削減」が必要になってくるのです。形式的な施策でかえって従業員の負担を増やすのではなく、本当に労働時間を削減するということです。ここで活躍するのがRPAというソフトウェアです。

Robotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)」、ロボットによって作業を自動化し、高い生産性をもたらします。

もちろん人型ロボットが作業を行うわけではなくて、ソフトウェアロボットを活用してパソコン上の作業を自動化するというツールです。目には見えませんがパソコンの中に存在し、皆さんが普段行っている業務の一部または全部を自動化してくれます。

何を自動化するのか?中心となる業務は繰り返し行われる「定型作業」です。たとえば購買部に届いた発注書を開き、特定のデータを抽出してシステムに転記するといった定型作業がある場合、RPAは発注書を開いてからシステムに転記するまでのすべてのプロセスを記憶してそれを実行してくれます。

発注書を開く、2番目のシートに移動する、左から3列目上から3番目のデータをコピーする、コピーしたデータの冒頭に特定の文字列を入力する、システム画面を呼び出す、コピーしたデータを入力する、登録して画面を閉じる。こうした細かい作業でも定型的なものなら何でも自動化の対象になります。

完全な定型作業なら100%自動化ができるため、これまでそこに生じていた労働時間は一気にゼロになります。これなら労働時間を抜本的に削減するための決め手になり、効果の高い労働時間短縮ができるでしょう。

RPAの導入効果はどれくらい?

現在、RPA活用に乗り出す企業は続出しています。ITR調査によると2021年までのRPA市場成長率は年間平均59.3%と驚異的なスピードで成長する見込みです。RPAがここまで注目を浴びている理由はやはり高い導入効果を持つためでしょう。
引用:ITR社「国内のRPA市場は2021年まで年平均59.3%と急激な成長、ITR調べ

某メガバンクでは2015年に年間8,000時間の労働時間削減に成功し、現在では月間5万8,000人分の労働時間短縮を目指しています。こうした事例から「雇用が少なくなるのでは?」という懸念を持つ方も多いでしょうが、実際はRPAによって仕事が無くなるという事例はありません。RPA研究の第一人者であるLSE(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)のレスリー・ウィルコックス教授※3<によれば、RPAによって仕事を奪われた事例は一つもない、むしろ人間から機械的な部分を取り除くことで仕事本来の楽しさを取り戻せるとしています。

RPAによる労働時間短縮は経営者にとっても従業員にとってもマイナス面はありません。むしろコア業務に集中したりクリエイティブな仕事により注力できたりと、双方にとってプラスな効果を多くもたらすでしょう。

たとえば営業部門では事務処理が少なくなることで顧客とコミュニケーションを取る時間が増えることで成約率を高められます。RPAとAIを活用すれば、営業が録音した音声から営業日報を自動で作成し、定型作業を大幅に削減するといった使い方も可能でしょう。

業務改善無くして労働時間の短縮はありえない

すでに制度改定を含めて、企業で労働時間の見直しや評価の改善が進み始めています。ただ、業務の本質的な見直しを行わずに、従来かかっていた時間を短縮することが不可能で、結果的に勤務事案の短縮は、生産性低下の上でしか成り立たなくなります。

もちろん、RPAなどテクノロジーの活用で、従来かかっていた作業を大幅に短縮することも可能ですが、同時に考えたいのが、本来の「業務のあり方」です。

  • 当たり前のように実施している作業がそもそも必要なものなのか?
  • 従業員はそもそもどの業務に時間を割いているのか?
  • システム化すべき業務の優先度は?

現在の業務内容やプロセスを見直すことで、不要な処理など多くの無駄を発見する機会になります。そもそも働き方が変わろうとしている中、旧来の業務プロセスをそのまま持ち込むこと自体に無理が生じる場合もあります。

一般的な企業においては、「日々の仕事=細かい業務の積み上げ」であり、業務単位の所要時間を短縮させることも重要ですが、業務そのものを見直すことで、全体最適を図ることで、生産性を大きく伸ばすことも可能です。

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