生産性向上は業務改善とは違う?基本をしっかり理解するために

 2021.07.30  ビジネス改革推進ポータル

生産性向上は業務改善とは違う?基本をしっかり理解するために

企業経営において生産性の向上は取り組むべき重要課題の1つです。限られた経営資源を有効的に活用するためには、いかに最小限の労力で最大限の成果を生み出すかが課題と言えるでしょう。そこで本記事では、「生産性」という言葉の概念を再確認するとともに、その重要性について深く掘り下げていきます。

業務改善とは別のもの!?生産性向上はなぜ必要か

企業とは、商品やサービスの提供を通じて価値を提供し、その対価として利益を得て発展していく組織です。そして、健全な成長と発展を通して社会に貢献することが企業の存在意義と言えます。社会に対してより大きく貢献するためには、いかに効率よく商品やサービスという価値を創出するかが重要な課題と言えるでしょう。そこで求められるのが、業務改善による生産性向上です。

生産性向上と業務改善との違い

企業にとって生産性向上と業務改善は非常に重要な経営課題であり、組織で働く人間であれば誰しも耳にする言葉と言えます。生産性向上と業務改善は混同されがちですが、厳密には定義が異なる概念です。本記事のテーマである「生産性」について正しく理解するためにも、この2つの違いを把握しておく必要があります。

企業経営における生産性とは、ヒト・モノ・カネといった経営資源の投入量に対する産出量の相対的な割合を指します。

■生産性を表す数式
【生産性=産出量(アウトプット)÷投入量(インプット)】

それに対して業務改善とは、業務プロセスのムダを削ぎ落として効率を改善することです。生産性を向上するためには、限られた経営資源を有効的に活用し、いかに最小限の投資で最大限の成果を生み出すかが求められます。そして、そのためには作業時間の短縮化や自動化など、業務プロセスの効率化が必要です。
つまり、業務改善は生産性を向上するための手段であり、1つの施策に過ぎません。

生産性向上が求められる理由と、実践するメリット

冒頭で述べたように、企業は価値創出を通じて利益を得ることで発展する組織であり、いかにして生産性を高めるかが業績向上の鍵を握っています。生産性が向上することで、売上高の上昇や収益性の改善、財務の最適化や雇用の促進など、さまざまなメリットが得られます。結果として従業員の賃金上昇や福利厚生の充実につながり、ひいては社会全体における経済の活性化へと至るでしょう。

こうした生産性向上の必要性が昨今高まってきているのは、日本経済を取り巻く環境と無縁ではありません。日本の総人口は2008年の1億2,808万人をピークに下降の一途を辿っており、高齢化率の上昇も相まって労働人口が減少し続けているのが実情です。これに市場のグローバル化が重なり、日本では生産性向上が社会全体で取り組むべき喫緊の課題となっているのです。

https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/15/dl/1-00.pdf
https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1261.html

生産性向上の方法は?

生産性とは、投入した経営資源に対する成果を指す指標です。ヒト・モノ・カネといった経営資源には限りがあるため、最小限の労力で最大限の成果を創出することを追求しなければなりません。この際、もっとも重要となるのは、企業の利益に直結するコア業務に経営資源を集中することです。
そこで、まずは成果や利益に直結しないノンコア業務に対し、どれだけのリソースを割いているかをチェックしなくてはなりません。自社の生産性を低い状態に閉じ込めている原因を探し出し、明確化することが生産性向上の基本ステップです。

同時に、企業理念や経営ビジョンに基づくゴールを明瞭化しなければなりません。理想とするゴールが明瞭になることで、現状との乖離を具体的に把握でき、どのようになれば生産性が向上するのかが明確化します。そして、理想とするゴールから逆算することで、優先的に取り組むべき課題や解決しなければならない問題が可視化されます。そうした検討から導かれた「生産性の高い状態」を組織全体で共有し、理念やビジョンの実現に向けて取り組むことで、結果として生産性の向上につながるでしょう。

生産性を測るには?

企業にとって生産性の向上は非常に重要な経営課題の1つです。しかし、実際に取り組むとなると、指標が曖昧になっている部分も多いでしょう。ここでは、生産性を測定する際に必要となる指標や具体的な計算方法について解説します。

生産性を定量化

生産性は産出量を投入量で割った値として算出されるため、「どのような指標を用いるか」によって導き出される答えも異なってくるのです。つまり、どんな生産性を分析したいのかに応じて指標を使い分け、何を産出量とし・何を投入量とするのかを定める必要があります。ここではそうした指標について代表的なものを紹介しますので、自社で明確化したい生産性について、参考にしてください。

まず生産性は「物的生産性」と「付加価値生産性」の2種類に大別されます。物的生産性とは、生産量や販売金額を対象とする指標です。一方で付加価値生産性は、財務会計で算出される付加価値額を対象とする指標です。

物的生産性と付加価値生産性を算出することで、生産性という抽象的かつ曖昧な概念を定量化し、具体的な数字に落とし込めます。そして、利益ベースの付加価値生産性だけを見て改善案や目標値を定めるのではなく、物的生産性とリンクさせて俯瞰的に把握することで、組織全体の生産性向上につながります。また、物的生産性と付加価値生産性の算出は、生産性向上の支援を目的とする政府の補助金制度などに申請する場合にも重要です。

労働生産性

労働生産性とは、「労働者1人当たりが生み出す成果」もしくは「労働者が1時間で生み出す成果」を数値化した指標です。そして、労働生産性は「物的労働生産」と「付加価値労働生産」の2種類に分けられます。労働生産性を分析する場合は、この2つの指標をリンクさせて把握しなければなりません。物的労働生産性は、生産量や販売数などを産出量の対象とした、労働者一人当たりの生産性を表す指標です。物的労働生産性を算出する数式は以下の通りです。

■物的労働生産性を算出する数式
【物的労働生産性=生産量÷労働量(労働者数×労働時間)】

これに対して、付加価値労働生産性は、付加価値額を産出量の対象とする指標です。付加価値額の計算方法は「積上法」と「控除法」の2つに大別されます。積上法は、生産過程で生み出された人件費や賃貸料などを積み上げて計算する方法です。控除法は、売上高から原材料費や外注費、機械の償却費用などの原価を除いた売上総利益を指します。そして、算出された付加価値額を労働量で割った値が付加価値労働生産性です。

■付加価値生労働産性を算出する数式
【付加価値労働生産性=付加価値額÷労働量(労働者数×労働時間)】

資本生産性

資本生産性とは、事業に投入された資本に対する成果を表す指標です。労働生産性は労働者を生産の主要素と捉えるのに対し、資本生産性は自社が保有する生産設備や機会、あるいは土地といった資本を対象とします。資本生産性の値が高いほど、「オフィスビル・土地・生産性施設・工作機械・駆動装置・電子機器といった自社資本を、有効的に活用できている証」と言えるでしょう。

■資本生産性を算出する数式
【資本生産性=付加価値額÷有形固定資産】

労働生産性を低下させる代表的原因

物的労働生産性や付加価値生労働産性など、さまざまな指標の分析は非常に重要ですが、まずは生産性の低下を招く原因を把握することも大切です。例えば、労働生産性を低下させる代表的な原因として「長時間労働」と「マルチタスク」が挙げられます。ここからは、なぜこの2つが生産性を低下させてしまうのかについて見ていきましょう。

長時間労働

日本は古くから滅私奉公の精神が好まれ、長時間労働を美徳とする傾向があると言われています。このような国民性も作用してか、事実日本は、世界的に見ても長時間労働の割合が高い国です。
厚生労働省の調査によると、国内企業において一週間の労働時間が49時間を超える労働者の割合は18.3%となっています。これはアメリカ15.7%、イギリス11.4%、フランス10.1%を大きく超える水準であり、いかに日本企業の長時間労働が常態化しているかが見て取れます。

長時間労働は疲労を蓄積させ、かえって業務に対するパフォーマンスを低下させる働き方です。従業員一人ひとりの業務負担の増大は職場全体の生産性低下を招きます。その結果、一人の従業員が抱え込む仕事量が増えることになり、長時間労働化するという悪循環に陥るのです。また、長時間労働は従業員のモチベーションを低下させ、ひいては心身に支障をきたす可能性もあります。

https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/karoushi/20/dl/20-1.pdf

マルチタスク

マルチタスクも労働生産性の低下を招く大きな原因の1つです。人間の脳は本質的に複数業務の同時進行はあまり得意ではありません。例外的にマルチタスクを得意とする人もいるものの、一般的に業務は一点集中型による取り組みが効率的とされています。
確かに一人の従業員が一度に複数業務を担当することで、短期的には、労働生産性が向上するケースもあるでしょう。しかし、それはあくまで臨時的な結果であり、長期的には効率が低下する傾向にあります。複数業務の継続は脳に大きなストレスを与え、うつ病や認知症を招く原因にもなり得ます。

労働生産性を向上させるには?

労働生産性を向上させるには、どのような取り組みが有効となるのでしょうか。今すぐに始められる取り組みとして、2つの施策が考えられます。1つ目はコア業務へ集中できる環境を整えることで、2つ目は従業員のスキルとモチベーションをアップさせることです。

コア業務へ集中できる環境を整える

生産性は、産出量を投入量で割った値として算出されるため、産出量を最大化し、投入量を最小化することで上昇します。つまり、限られた経営資源をいかにしてコア業務に注力するのかが重要です。まずは無駄な業務を洗い出して削減し、従業員がコア業務へ集中できる環境を整える必要があります。
有効な手段として挙げられるのが、「業務プロセスの可視化」「自動化に寄与するITソリューションの導入」です。その際は必ず現場の声を聞き、どのようなソリューションが業務改善に貢献するのかを検討しましょう。そのほかにも、ノンコア業務やルーチンワークは可能な限り標準化・マニュアル化するなど、コア業務へ集中できる労働環境を整える必要があります。

従業員のスキルとモチベーションをアップさせる

「人はパンのみにて生くるものに非ず」という言葉があるように、従業員は金銭的報酬のみを求めているわけではありません。そのため、給与や報酬といった外発的動機付け以外にも、やりがいや達成感などの内的動機付けを与えられる環境構築が必要です。
例えば、スキルアップのためにトレーニング環境を提供したり、コミュニケーション向上のために定期的な勉強会を開いたりといった施策が挙げられます。こうした取り組みによって従業員同士の信頼関係や企業への帰属意識が高まることで、結果としてモチベーションと生産性の向上につながります。経営者層が一方的に施策を実行するのではなく、従業員の見解や希望を聞き出し、自発的な活動を促す環境づくりが重要です。

まとめ

企業が健全な成長と発展を通して社会に貢献するためには、いかにして生産性を向上させるかが重要な課題です。企業経営において生産性は、経営資源の投入量に対する産出量の相対的な割合を指します。限られたリソースを有効的に活用し、コア業務へ集中できる環境を整えることが第一歩と言えるでしょう。ぜひ、本記事を参考にして自社の生産性向上に取り組んでみてください。


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