業務改善はダイエットです ~ リバウンドのない施策を ~

 2018.11.13  ビジネスプロセス改革推進室

業務改善とはズバリ、ダイエットです。

通常ダイエットでは、

  1. ダイエッターのパーソナルデータを整理し、
  2. ウェイトが増えた原因を洗い出し、
  3. 軽い助走期間で幾つかのダイエットプランを試し、
  4. 最も効果のあったプランを本格的に実施し、
  5. リバウンドが起きないよう生活習慣を含めたアフターフォローを行う。

というような流れではないでしょうか。実は、業務改善も全く同じ流れなのです。

  1. 業務改善現場の現状と課題を整理し、
  2. 作業コストや生産性低下の原因を洗い出し、
  3. 軽い助走期間で幾つかの改善プランを試し、
  4. 最も効果のあったプランを本格的に実施し、
  5. 改善効果が実運用で定着するまで伴走運用を含めたアフターフォローを行う。

如何でしょうか。

業務やシステムもヒトと同じように、成長や縮退、疲労(老朽化)や回復&強化などを、特性として持ち合わせている事を考えると、非常にアナロジー性の高いモデルといえるでしょう。

ここで、1つの落とし穴があります。

それは、ダイエットにしても、業務改善にしても、見える改善と見えない改善がある、という点です。そして多くの場合、見える改善が優先され、結果として本当にダイエッターや現場が求める効果が得られないケースすらあります。この落とし穴を作り出している要因はたくさんありますが、その主要なものの1つに、数値化できた事による安心感があります。

具体例を見てみましょう。多くの場合、業務改善の現場に於いて、改善効果として期待されるのは、次のような項目、

  • 業務プロセスの整理による処理時間や作業ステップ数の見える化、およびその削減
  • 作業ミス発生回数の見える化、およびその低減
  • 人的依存プロセスの見える化と切り離し、および切り離し部分の自動化
  • RPA導入推進による残業や休日出勤の削減

つまり、数値として定量評価し易い領域の施策が大半ではないでしょうか。勿論、規模や時期により、予算や期間が切り詰められた中での難しさはよくある話ですが、なればこそ、急いて事を仕損じる事のないよう、本質を見極めるのが最優先課題ではないでしょうか。

数字には分かり易い半面、全容や本質を捉える事が難しい、という本質的な特性があります。それは世界が均一ではなく、均質でもない以上、数値化された情報は、どこまでいっても全体の一部しか表現できないためです。

  しかしながら、裏を返せば、数字には限定された世界の一部を表現できるという、特性があると言い換える事もできます。これは、対照実験として、施策やシステムの新旧における効果比較をする場合など、使い方によっては、強力なツールとなり得ます。

そしてこのツールを使いこなすのは、他でもない、ヒトなのです。

従って、業務改善の施策を定量評価する際は、どの領域を顕在化させていて、他に潜在的に数値化できない領域をどのように含んでいるのかを、常に考えて評価していく必要があります。

せっかくの強力なツールも、使い方を誤れば、即ち、数字による世界の切り取り方を誤ったり、切り取った結果の解釈を誤れば、それはなんの意味もないものになるか、むしろ誤った施策に繋がり、状況は悪化するでしょう。それでは、どういった点に考慮して、業務改善を進めればよいのでしょうか。ここでもう一度ダイエットの例を思い出してみます。 

短期間で高いダイエット効果を得ようとして、過度な食事制限や許容量を著しく超えたトレーニングを行った場合を考えてみましょう。結果としての数値は一時的に当座で目標とする減量値を達成するかも知れませんが、骨や心肺機能に負担が掛かり過ぎた事により、ダイエットが頓挫し、結果として、目的の減量値まで達せず、結局リバウンドしてしまいます。これは、美しく痩せる、健康的に痩せる、リバウンドのないように痩せる、などの事例と同様に、「痩せる」という要望は単一であっても、暗黙的に複合的な課題を解決しなければ、顧客満足を得られないケースの代表例です。

前章で、改善には、見える改善と見えない改善がある、というお話をしました。これは、単に数値化できない改善領域がある、という単純なものではなく、例え数値化できたとしても、本来の改善効果として認識できない領域が存在するというものです。また、この問題を更に分かりにくくしている背景として、見えない領域を、見える化した瞬間、それは全体の一部となり、既に見えない領域を含んでいる、というジレンマがあります。

それは、凡そ業務改善を必要とするような現場では、システム要素、ドキュメント要素、コスト要素、コミュニケーション要素、ファシリティ要素など、扱う変数は、非常に多く、かつ多岐に渡り、見る角度や、範囲によって、数字は簡単に変わり、端的に数値化された結果は特に、あくまでその1つの側面しか表していないからです。

  しかしながら、現場担当者としては、システムの完成度とは関係のない部分で、使い慣れたレガシーのやり方から変わる事に抵抗感があったり、業務住み分けが明確化された事で、本来生産性が上がるはずなのに、実際には、責任分割点の明確化により、心理的に業務遂行のスピードが低下するケースは数多くあります。「ヒトを」あるいは「ヒトが」扱う業務である以上、人的バッファの利点などもあり、単純に電子化してしまえば効率化できるとは限らないのです。

これは、実際の現場において、本来は定量化できない領域にこそ、改善して欲しいという要望、あるいは改善すべき要件が、潜在的に存在するためです。表面上のコスト削減を行っても、この部分を対処していないと、かゆい所に手が届かない施策となり、強いては現場のモチベーション低下なども含め、多方面に飛び火する可能性を秘めているため、業務改善を試みる上で、ユーザビリティや心理的要素など、見えない部分での力学も、無視できない要素と言えます。

「正確さ」という言葉にも多面性があり、正確であるという事を、ツールや方法論を基準とした指標で考えるのではなく、あくまでクライアントニーズに沿っているという意味での正確さを追求する事の方が大切ではないでしょうか。

 この意味に於いて、今後人工知能などの急速な技術的進化や社会への浸透などに伴い、ツールや現場リーダ、そしてコンサルタントの在り方さえも、変化を余儀なくされるでしょう。

 クライアントニーズには、曖昧さや、現場メンバすら思い付かない潜在的な気付き、当事者意識のバラツキによるコメントのムラ、スコープによる価値観の違い、気付いていても諦めバイアスで顕在化しない問題意識なども含みます。これら多様性をシステマティックに吸収していくには、システム自体にも、即応性と柔軟性のあるプラットフォームが求められていくでしょう。

定量評価と定性評価の狭間で、見失いがちな改善ポイントの本質について、判断に迷う場合は、一度原点に立ち返り、本記事でご紹介したようなダイエットなどの身近でシンプルな事例に置き換えて考えてみると、優先順位や取捨選択などに於いて、大きく的の外れた施策になる事を回避する手掛かりとなるでしょう。

「声ならぬ声に傾ける耳」を持ち、数字やシステムの無機質な向こう側には、常にヒトの顔があることを忘れないようにしたいものです。

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