RPAは万能か?業務改善の本質を考える

 2019.05.31  ビジネスプロセス改革推進室

人間がパソコン上で行う定型作業の多くを自動化し、生産性を大幅に向上させること。
「RPA (ロボティック・プロセス・オートメーション)」と言われる業務自動化のツールは、すでに多くの利用例もあり、現在でも非常に注目されているソリューションの1つと言えます。
すでに大企業を中心に導入が進んでおり、数々の事例も出てきています。

そこで、今回は、働き方改革法案の思考も進む中、日本企業の労働問題の実情とRPAの活用や業務改善の進め方についてご紹介します。

 働き方改革とRPA

2019年4月より順次施行が開始された「働き方改革法案」ですが、当面は「大企業」と定義される企業にその適用は限定されスタートしました。
参考文献:厚生労働省京都労働局「働き方改革関連法の主な内容と施行時期」

その改正「働き方改革法案」の柱の一つになっているのが「長時間労働の抑制」です。
日本の労働環境では長らく長時間労働が一種の美徳としてとらえられてきました。しかしながら、近年における過労死などの社会問題化や女性の社会進出、社会の構造的変化などの様々な要因によって、労働時間の適正化がすべての企業や組織において喫緊の課題となっています。

一方で、業務量やプロセスをそのままにしながら勤務時間にだけフォーカスを当ててしまうと、結果的に働く側にとっても大きな負担になるだけです。
そこで、まず効率化しやすい定型作業を自動化して、付加価値の低い作業を徹底的に削減しようという取り組みが始まっています。

皆さんは、日本の労働生産性がどれくらいかをご存知でしょうか?ちなみに労働生産性とは、仕事に投じた人員や時間に対して得られる対価です。OECD(経済協力開発機構)が行った調査によれば、日本の「時間あたりの労働生産性」は約46ドルです。この数値や主要先進7ヵ国(G7)の中では最下位の数値で、OECD加盟35か国の中では20位です。
引用:公益財団法人 日本生産性本部
「労働生産性の国際比較 2017 年版~日本の時間当たり労働生産性は 46.0 ドル(4,694 円)、OECD 加盟 35 ヵ国中 20 位~」

国別に年間労働時間を比較してみると、日本の年間労働時間は平均1,710時間、ドイツの1,356時間と比べればその差は圧倒的です。先進国中最も労働時間が長いと言われている米国は日本よりも約70時間多い1,780時間ですが、労働生産性は日本よりも23.6ドル多い69.6ドルと言われています。
引用:OECD.stat

日本企業の労働時間が長いことは昔からだとして、なぜ日本はここまで労働生産性が低いのでしょうか?それには大きく以下の3つの理由があると考えます。

文化的側面

もっとも端的な例は、「上司や同僚が残業しているのに自分だけ先に帰りにくい」というものでしょう。若い世代に行くにしたがってこのような傾向は希薄になっているとはいえ、まだまだ根強く残っているのではないでしょうか。その理由として、外資系企業では自分の責任範囲が明確に定義されているために、自分の仕事が終わればそれでよいのに対し、日本企業では「就社」意識が高く、責任範囲が不明確なために全員終わるまで終わりではないという意識を生んでいる側面もあるでしょう。

経済的側面

基本給が低く抑えられているため、残業代がないと生活が苦しいというパターンです。会社側も働く側も暗黙の了解のようにこのような報酬体系であることがまだまだ多く、働く側が積極的に残業を行うという状況も見受けられます。

一部の企業では、基本給のアップとセットで残業縮小を行い、大きな成果を上げている例もあります。

IT活用の側面

日本ではITツールのリテラシーが低いという調査結果があります。

参考情報:プレスリリース:ガートナー ジャパン株式会社(2018年3月12日)
ガートナー、主要先進国のワークプレースに関する実態調査結果を発表、日本の働き方改革に立ちはだかる課題が浮き彫りに

せっかく世の中には生産性を上げるためのツールが次々に提供されているのに、いつまでも旧来のやり方にこだわり、そのメリットを享受できていないのです。今後はより合理的な判断に基づいた業務のあり方が求められるでしょう。
こうした長らく日本でつくられてきた労働慣習によって、労使ともに残業や長時間労働が織り込み済みの報酬体系や組織設計になっていたりするのです。

しかしながら、いま日本の働き方は大きな転換期にあります。これまでの「長く働いているのが偉い、がんばっている」という価値観は社会通念的に否定されつつあります。経営者の中にはこうした状況を受けて、とにかく残業排除と労働時間短縮に取り組むケースもあります。しかし、単に労働時間を短縮しただけでは、労働生産性は上がりません。さらに昨今の人手不足が追い打ちをかけます。業務の効率化は待ったなしの状況なのです。

だから働き方改革にRPAが効く?

長時間労働の中身を見てみると、意外と多いのが「単純作業の多さ」です。世界に比べてIT活用度が低い日本では、ソフトウェアなどで自動化できる単純作業も人手で行われているケースがあります。なんとなくITを信用しきれていないとか、投資対効果や完璧さをもとめるあまりに躊躇しているケースもあるでしょう。

このようなジレンマを抱えている状況にRPAは非常に有効なソリューションです。そもそもRPAは、ホワイトカラー業務を中心にマニュアル化可能な業務を自動化するためのロボットソフトウェアだからです。

ロボットソフトウェアといってもAI(人工知能)のように、自ら何かを学習して行動するものではありません。あくまで人間が定義した操作手順に従って作業を実行し、単純作業を自動化します。

RPAが適用できる範囲はというと、「マニュアル化され作業手順が決まっているすべての業務」です。たとえば経理業務において台帳から売上データを抽出し、システムに入力するような業務があるとします。RPAでその作業手順を定義すれば、ロボットソフトウェアが自動的にその業務を行ってくれます。

RPAを活用すれば労働生産性は確実に向上します。その上で労働時間短縮などに取り組めば、働き方改革の効果を最大にし、企業体質改善にも役立つでしょう。

RPAの効果はそれだけじゃない

RPAを活用することで労働生産性が向上すると説明しました。しかし、活用の効果はそれだけではなく広範囲に及びます。たとえば人的ミスが無くなるという効果も大きなメリットです。

RPAはロボットソフトウェアなので人的ミスのような誤操作が発生しません。定義した作業手順さえ正確ならば、それに従ってプログラムを実行するためミスが起きないのです。単純作業では集中力を継続することが難しく、人的ミスが多々発生します。そのミスが後々大きなトラブルを生む可能性もあります。

人的ミスが無くなればトラブルも回避でき、ひいては労働生産性の向上効果を増大してくれるでしょう。

さらに、RPAには離職リスクがありません。従業員がコア業務に専念できるように一時的な人員を増やして単純作業にあてても、離職リスクがあるためそこまでかけた教育のコストや手間が無駄になってしまう可能性があります。

その点RPAが離職することはもちろん無く、労働時間も関係ありません。24時間365日稼働し続けても労働基準法に違反することなく単純作業を遂行できます。

このように、RPAには様々な副次効果があります。単純に労働生産性が上がるだけでなく、リスクマネジメントにもなるのです。

業務改善の本質を考える

ここまで、RPA利用のメリットや成果についてご紹介してきました。いかに注目度の高いRPAと言っても、万能ではありません。

本当にRPA導入によって解決するのが効果的なのか、プロセスそのものを見直しや、他のシステム対応による解決など、複数の方法を検討することをお勧めします。

例えば、以下のようなケースです。

「毎日大量の紙データ送られてきて入力が必要な業務があります。その原因は、現在使用しているシステムが旧来型のオフィスコンピュータで外部システムと連携できない為、担当者が数名係でデータ登録作業を行なっています。」

業務システムは個別最適に構築されることが多いため、システムの都合上「重複するデータ入力が必要」と言った状況は、よく見受けられます。
その多くは、システム同士がデータ連携していないため「帳票の出力やデータの入力が連続して発生してしまう」ことで、これは個々のシステムが単独で設計されているために起こる問題です。

この場合、いくつか解決方法が考えられます。

  • RPAを使用して、データ入力を自動化する
  • 該当するシステム同士のデータ連携を検討する
  • その業務処理そのものが必要なものが見直す

他にも検討方法はあるかもしれませんが、ここですでにお気づきかと思います。
RPAの導入は、今どこにある処理の自動化を得意としていますが、業務設計やフローの改善にはなりません。また例外処理やイレギューラーな処理にはやはり人間による判断が必要となります。

一方で業務改善として捉えるならば、業務そのものが必要なのか、必要であるならば、それを効率的に処理するためにはどうすべきかを検討します。
そのため、まず必要となるのは「業務量やプロセスを可視化」し、現在の業務課題を正しく把握することとなります。

単純に「勤務時間の短縮」にだけ目を向けるのでなく、業務量そのものの定量的な分析や業務プロセスを見直すことによる根本的な改善など、多面的に業務のあり方を見直すことも大切です。

RPAの導入検討に合わせて、そもそもその業務が必要なものかどうか?改めて考え直してみてはいかがでしょうか。

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